〇「リワイヤリング」をもっと細かく。
WOODVILLAGEが誇るクレイジーリペアマン TATSUMI による「リペアラインナップ」。そのなかに”リワイヤリング”の項目がございます。これだけを目的にご来店されるお客様はほとんどおられませんが、ポットやジャックの交換、ピックアップの交換などをお申し付けのお客様へ我々がその場でオススメすることがございます。
今まではBELDENが在庫にあったので、ヴィンテージスタイルのクロスワイヤーとともにどちらにしますか、という風にお選び頂いておりました。…が、此度もうちょっと突っ込もうと思い、種類を増やすことにしました。
〇取り扱いモデル。※すべて22AWG/撚線
【クロスワイヤー】
国内で調達可能なもので詳細は不明。はんだメッキあり。
【BELDEN 型番は不明】
ウッドヴィレッジ前任のリペアマンが残していったもの。型番は記載されていない。
【OYAIDE 3398】
オーディオ機器用内部配線材として銘打たれている。
【潤工社 銀メッキ12/0.3sq (ジュンフロン被覆)】
高密度配線に要求される電気/機械特性などの高い信頼性あり。
の、4種類ラインナップ。(いわば+2種類です。)
クロスワイヤーを基準に改めてそれぞれの印象を比較致しました。「私共もお客様にオススメしやすく」そして「お客様もお選びやすく」を目標に検証。ただ、数値がどうこうなどの専門的な分析ではなくギタリストの感覚を頼りにしたあくまで抽象的なインプレッションであることを念頭に、チカラを抜いて一読いただければと存じます。
〇それぞれのインプレッション。
エントリーナンバー1番
【クロスワイヤー】
もともとがこれだったので以降の基準となります。※なおラストに再度改め所感を確認しております。
《全体的に》
・スムースで落ち着いたプレゼンスであるがトレブルはパンチがありアタックがハッキリしている。低音、とくに巻き弦の感触は掠れた雰囲気でわざとらしい主張はない。微妙に歪み感があり、ささやかなコリっとした質感に繋がっている。
《VOLの追従性》
・高域は残らずに落ちる、文字通りフィルターでカットされた感じ。その分ピッキングレスポンス、ダイナミクスは若干曇り、狭くなる。遠くで鳴っている感じ。
《TONEの追従性》
・乾きつつも存在感のあるハイミッドは残ったまま、全体の重心が安定するイメージ。素直な効きともいえる。
エントリーナンバー2番
【 潤工社 銀メッキ12/0.3sq (ジュンフロン被覆) 】
《全体的に》
・トレブルは落ちつき相対的にミッドが強調される。プレゼンスよりも高い位置の成分は残っているのか空気感が出た。それゆえレスポンスに対しても良好で表情が鮮やか。巻き弦にもその特徴はありクリアで艶やかなキャラクターに。ミッドが強調、といっても決して厚ぼったい感じではなく非常に上品。音量感が増して柔らかな生感がする。
《VOLの追従性》
・その、空気感を感じる上の帯域が残っているからかダイナミクスは大き目に感じる。ナチュラルにGainが減ったイメージ。
《TONEの追従性》
・ソリッド感は少なくまろやかな音像に。角が取れる、というより境界が滲む雰囲気。
エントリーナンバー3番
【OYAIDE 3398 】
《全体的に》
・音量は感じるが全体的なレンジが低い方へシフトした。重心が重くなり巻き弦はカタマリ感を増した。高域はあまり存在を感じず、それゆえダイナミクスレンジは小さく感じる。ローミッドあたりにコンプ感あり、これがカタマリの正体か。ごわっとしていて分離感はあまりない。
《VOLの追従性》
・出ているレンジが落ち着いたためか、ローミッドにコンプ感があるためか、奥に引っ込んでしまう。
《TONEの追従性》
・フィルター感が強め。抜け感に繋がるハイミッドの存在は感じない。
エントリーナンバー4番
【 BELDEN 型番は不明 】
《全体的に》
・元気なトレブル、控えめなローミッドがクロスワイヤーのレンジ感に極めて近い。ただトレブルに若干のコンプ感を感じるため分離感というか粒立ちを感じる、それゆえかアタックから音程がわかるカタチまでの速さが一番速く感じた。
《VOLの追従性》
・これもクロスワイヤーと近く、スタンダードな落ち方をするが違いとしては前述のコンプ感があるためか固形感は残る。その残り方が若干わざとらしく感じるので好みが分かれるところ。
《TONEの追従性》
・ VOLでの特徴と同じくコリっとした感触は感じるが残った帯域はやや自然な印象。
【クロスワイヤー】<再検証>
《全体的に》
・一番アグレッシブなサウンドであることが分かった。高域はローファイではあるがガツンとパンチ感があり、ハイミッドの存在感がロックな印象。低音はささやかに存在しているのでペラペラにはならないが控えめなのでリッチな雰囲気ではない。掠れたなかに微妙に歪みを感じ、強く弾くとゴリっとアタック感がある。
《VOLの追従性》
・意外にもダイナミクスレンジは悪くないほうだった。ピークが落ち着いたハイミッドに変わりトーンレンジが落ち着く。あくまでギターサウンドらしい範疇でバランスが取れる。
《TONEの追従性》
・オーガニックな効きで残るべきところは残る。やはり重心は安定し平均的で使いやすいレンジに収まる。
〇それぞれの方向性について。
クロスワイヤーとBELDENを標準とし、『荒々しくもナチュラルな感じが欲しいならクロスワイヤー』、『アグレッシブで分離感が欲しいならばBELDEN』というポジション付けは如何でしょう。
そこから、『ピッキングや手元のコントロールに対してシビアで、ワンランク上のトーンが欲しいならジュンフロン』、『トレブリ―さを抑えたい、または歪んだときに重み&圧が欲しい、引きずるようなノリが欲しいならOYAIDE』といった方向へ派生してラインナップをしてゆこうと思います。
かなり大雑把に落としましたが、今回改めて腰を据え検証をしてみて得たものはありました。音色をリファインするにあたりピックアップの次に見直すべき箇所ではないかと思いました、あくまで電装系に限った場合ですが。
また、「こんな音が出したい」という最終的なアウトプットを視点に置くことも間違いではないですが「こういった引き心地が欲しい」という、そもそものインプット段階に視野を向けることによって、プレイヤーのスキルアップへ繋がる一因となれるならば、これほど嬉しいことはございません。今後、積極的にお勧めしたいと思います。
ご来店頂けました際は直接もっと突っ込んだお話が出来れば幸いです。
ここまでご精読いただき誠にありがとうございました。
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