前回のコラム↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
内部配線でサウンドはどう変わるのか。ゆるい検証記事でございます。
「「「あけましておめでとうございます。」」」
SNS等で年内には書き上げると言っておりましたが結局バタバタしており…年を越してしまいました。いやはや。
検証自体は12月中に行っており、メモもイメージもばっちりしておりましたので何卒ご容赦ください。
ではでは。早速、本題に入ろうと思うのですが今回のエントリーはこちら。
- Cornell Dubilier – MSR
- Cornell Dubilier – Type150
- Vishay/Roederstein – MKT1813
- Sprague – Orange Drop
- Mullard/Philips – Tropical Fish
- Philips – Orange Drop
- Wurth Elektronik – WCAP-FTBP
一点ご留意願います…。
前回と同様、数値化はしておりません。あくまで私の聴覚上の判断となります。
というのも数字に表したところで実際に弾き、聴き、感じるのは曖昧な人間の耳。故に一人間、一プレイヤーである私が感じた感触は、少なからずお客様も感じていただけるものと存じております。
勿論、具体的な数値をみることでご納得いただけるお客様がいらっしゃるということは承知のうえですので…あくまでご参考まで。ホントかぁ~、とお思いの方は是非是非ご来店くださいませ。一緒にディスカッションしましょう!
◆はじめに
一定の基準となるものはエントリーライン含め幅広いモデルに搭載されている「Uxcell – 濃い緑フィルムコンデンサー(※通称グリーンガム)」。また、検証中に音色が変わらぬよう真空管アンプは避け、安心のジャズコーラスで鳴らしました。ハムバッカーとシングルコイル共に検証。勿論それぞれに合わせた値です。ギターのトーン回路は両者パスした状態。ではいきませう。
1. Cornell Dubilier – MSR
巻き弦はしなやかな飽和感があり、重心は低い部類。一方ハイミッドは充分なヘッドルームに若干のエアー感、軽やかな雰囲気も感じ、ローファイな艶感が特徴的。立ち上がり方がしっとりしている。
2. Cornell Dubilier – Type150
巻き弦はカタマリ感があり重心は低め。ただアタックに対してドライなコンプ感があり、晴れやかな印象(※リリースは速く感じる)。ローファイな雰囲気は①とも共通する特徴。ハイミッドの立ち上がりがこちらは乾いたパンチを感じる。
3. Wurth Elektronik – WCAP-FTBP
コシがしっかりしておりタイト。自然なコンプ感ゆえか粒立ちがハッキリしておりモダンな印象。粘りなどクセはなく透明な質感。似たキャラクターである以下④と比べるとウェイトは低めなのか奥まった雰囲気。
4. Vishay/Roederstein – MKT1813
巻き弦、プレーン弦ともに軽くコンプ感がありドライかつ明瞭。歯切れもよく分離感もあるがクセはなし。巻き弦の曇りが少ないのが好印象、ゆえに冷たさも少し感じる。全体的なレンジが整っており最もピッキングに対するレスポンスが良い。モダンにローパス機能を追求したら、といった雰囲気。
5. Sprague – Orange Drop
おおよそ700Hz前後のミッドが残るため濃密でこんもり。ある程度ではあるがピッキングの強弱に左右されず音の距離感が一定に聴こえる(※ダイナミックレンジは狭め)。分離感は感じず、もたつきも感じるが深くピッキングした際の食いつきがワイルドで個性的。
6. Philips – Orange Drop
立ち上がり、ミッドに艶を感じる…いわゆる程よいコンプ感。見た目に引っ張られている訳ではない…!が、⑤をクリアに削ぎ落し、扱いやすくしたキャラクターというのが最もイメージしやすいか。モダン方向ではないが透明感はあり、粒立ちも良い。どちらかといえば分離感はある部類。
※80’s頃に生産が終了したトロピカルフィッシュの後継らしい。オレンジドロップの呼称で良いのかは不明。
7. Mullard/Philips – Tropical Fish
分離感はよくない。ダイナミクスレンジも狭い。ソリッド、やタイト、が好みの方にはおすすめできない。が…しかし、ハイミッドに唯一無二の歌うようなグルーヴを感じる。その飽和感ゆえに複音だと団子に歪むような感覚もある。ローファイでその個性一点に特化したようなサウンドではあるが、どこか説得力はある。ドライブしたリードトーンとの相性も良いでしょう。
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ちなみにグリーンガムは、しっかり出るべき帯域はでており軽やかな所感。コンプ感は少なく、クセは無し。面白味に欠けるといえばそうですが、改めて述べるならば悪いところが無いというか、最低限以上のシゴトはしているという印象。個体差については何とも言えませんが、コストを考えるとファクトリーラインのスタンダードである理由がわかったような気がします。色々弾き比べて何ですが選択肢としてコレはコレでありなサウンドでした。
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◆耐圧による違い
コンデンサーはシングルコイル(0.047uF)、ハムバッカー(0.022uF)など数値が異なります。それとは別にそのあとに続く耐電圧の値によってもサウンドが変わるとされています。巷では「音に深みが出る」などと言われておりますが実際どうなのでしょうか。
注記しておくと上記はカットした状態でのサウンド。これに関しては繋いだだけでも若干の差を感じ、絞ったときにその特徴が顕著という雰囲気でした。
- 250V
深み、という点では特に感じず補正のないニュートラルといった雰囲気。 - 400V
空気感、ムードを感じる低音域に若干手を添えられているような雰囲気。 - 630V
リッチ。先述のとおり深みを感じるレベル。 - 1000V
ここまでいくとサイズがデカいばかりか、ムードむんむんで少し暑苦しい。ピッキング時のトランジェントに対しても巻き付いて反応や解像度、バランスも崩れてしまうように感じる。
1000Vは少々やりすぎ感、というかやっつけ感があったので250V~630Vの間でチョイスするとよさそうです。ピックアップの出力、またはキャラクターによって変える…例えば250Vでドライ&タイトにまとめても、630Vで一音の存在感を強調してもいいでしょう。ただ出力の強いピックアップは、シングル/ハムバッカー問わず低音域の圧が強い傾向にあるのでその点は注意されたし。
しかしながらジャンル、アンサンブル、パートによってはカットすべき帯域ともいえます。無い状態のものをさらにカットするか、ある状態のものをカットして部分的に残すか。それによっても聴こえ方が異なるのが面白いポイントですね。
◆まとめ
そもそもトーンコントロールのイメージですが。コンデンサーによってある程度捨てられて残った音が聴こえるというもので、つまり我々が聴いている音は残りカスなわけです。「通しただけで音が良くなる」、という評よりかは「個性的な捨てっぷり&残し方のセンス」こそが奴らの違いなのです。
またピックアップのように変えただけで劇的に変わる部分ではなく、絞ってこそわかる部分なので普段から手元が忙しく動く習慣がないとその恩恵は得られないのかもしれません。(※フルテンの状態でも多少変わりますが非常に微々たるレベルです。)
ならば、これを機にトーンコントロール。触ってみてはいかがでしょうか。前回の線材でも最後に述べましたが、インプットの部分に目を向けることで見つかる、自分だけのサウンドがあるように思います。
または単純に、エフェクターのTONEやアンプのPresenceでもカットしきれないレンジを触れるのは割と便利でございます。70年前から変わらず搭載されている機能、そう言うとロマンを感じるのは私だけでしょうか。
――ちなみにアイキャッチ画像は今回検証に使った ”コンデンサー弾き比べ装置” でございます。店頭に来ていただいた際、試奏をご所望でしたらお申しつけください。
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